宿屋「魔王城の近くに休憩所作ったった」

1: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:08:08.99 ID:xRD8RazP0
チュンチュン

旅人「う、う~ん…?」

僧侶「お目覚めですか…」

旅人「こ、ここは…途中で立ち寄った休憩所…?確か私は、魔王城へ乗り込んで…」

僧侶「貴方は魔王城で倒れられたのです。そこで運よく、同じく魔王城へ乗り込んでいた方がここへ運んで下さったのですよ…」

旅人「そうだったんですか…!そ、それでその方はどちらへ!?」

僧侶「貴方の所持金を半分懐に入れた後は、魔王城へ足を踏み入れておりません…。貴方も体験したでしょう…あそこは、未熟な人間が立ち入る場所ではありません」

旅人「…」


>ここは、魔王城近くの休憩所。今日もまた、勇者を目指す者がそこを訪れる。そんな者たちに一時の癒しを提供する為、24時間営業中。
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3: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:10:36.81 ID:xRD8RazP0
宿屋「ヒャッホッホ~イ、臨時ボーナスゲェェ~ット!」

居候「浮かれてんなぁ、宿屋の野郎」

商人「大仕事と大量収入、宿屋の好きなものが同時に舞い込んできたからねェ」

居候「おいコラ宿屋、朝っぱらから酒盛り始めてんじゃねぇよ」

商人「酔っても人前で脱ぐんじゃないよ~。居候、こんなんでも年頃の女の子なんだから」

宿屋「こんなんでもな」

居候「こんなんで悪かったな!」

ガチャ

僧侶「昨日のお客様、レベルを上げてくると言って引き返されて行きましたよ」

商人「ありゃ。一人旅してくる根性あるんだから、あと2、3回は突撃かますと思ったんだけどねェ」

宿屋「ちぇー、そしたらまた臨時収入入ったのにー」

居候「お前は人の命と金、どっちが大事なんだよ!」

宿屋「人の命でェ~す、そんな質問するなんて、居候ちゃんったらぶ・す・い♪」

居候(超ウゼェ…)

僧侶「うふふ。まぁ良かったじゃありませんか、一人の命を救えたのですから」

居候「…だな!」

宿屋「リピーター、ゲ~ッツ」

>お調子者の宿屋、平和を愛する僧侶、マイペースな女商人、男勝りの居候。そんな4人の、いつもと同じ1日が始まる。


商人「今日も、平和だねェ…」
4: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:11:22.41 ID:xRD8RazP0
魔王「魔王城近くが平和でたまるかぁァ――ッ!」ガシャーン

僧侶「あらいらっしゃい」

居候「よぉ魔王、今日も元気そうだな」

魔王「貴様アアァ、まーた我が城で好き勝手やってくれたようだなあぁ!」ビシィ

宿屋「あ。俺が謎解きに必要な石像を部屋の角っこまで押してそのままにしてきたことか。すまん。」

魔王「元に戻すの大変だったが、そっちじゃねえぇ!魔王に歯向かおうという愚かな人間をあと一歩で殺せるという所で、貴様が連れ去っただろう!」

僧侶「あ、ご安心下さい。あの方はこちらで説得しましたので、しばらく歯向かいには来ないでしょう」

魔王「そういうことじゃねぇ!人間達への見せしめに、愚かな人間を血祭りにあげようと思ったんだぞ俺は!」

商人「そりゃ災難だったねェ」

魔王「許さん、今日という今日こそは…!」

宿屋「やれやれ。分かり合えないのなら…やりあおう」シャキーン

ドガッドガッ



居候(ここの休憩所は魔王城とスープの冷めない距離にあり、魔王は頻繁に殴り込みに来る))

魔王「いつもいつも、邪魔しやがってー!」ドゴーンバゴーン

居候(正確には、2、3日に1回かな)

宿屋「この休憩所が無かったら、皆HPとMP不足で引き返してますって~。だから魔王君と俺らは持ちつ持たれつじゃないですか~」

居候(まぁ宿屋の言動にイラッとくるのは、同居人だからよーくわかるけど)

魔王「そっちが俺を一方的に客寄せパンダに使ってるだけじゃないかーッ!」ドビューン

居候(こういうことがある度に来るコイツも、相当律儀だよな)
5: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:11:52.80 ID:xRD8RazP0
僧侶「朝イチの運動は体に良いことですねぇ…」茶ズズズ

商人「客寄せパンダか…作ろうかな、魔王の観光グッズ」

居候「魔王が余計怒るだけだって」



居候(魔王にとって都合の悪いこの施設だが、魔王に潰されない理由がある)

僧侶「魔王さーん、施設を神聖魔法でガードしてるので思い切りやっても大丈夫ですよー」

居候(この僧侶さんの神聖魔法により、建物には強硬なガードが張られている。しかしそれだけではなく――)




魔王「ゼェッ、ゼェッ…」

宿屋「もう終わりか魔王君?」

魔王「クッ…化け物が」

宿屋「だって俺もうレベルカンストしてますしィー♪」

居候「お茶淹れたから飲んでいけよ魔王」


居候(この宿屋、魔王よりずー…っと強いのである)
6: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:12:29.97 ID:xRD8RazP0
僧侶「今日も魔王さん元気一杯でしたねぇ」←ちなみにこいつもレベルカンスト

宿屋「魔王め腕を上げおったな、こりゃその内世界征服されるかもしれんな、あっはっは」

居候「おいおい冗談はやめてくれよ、あいつそんなに悪い奴じゃないよ」

商人「ほんっと、居候は世間知らずだねェ~」

居候「そりゃ育ての親が悪かったんだよ」

宿屋「教育失敗しました」シクシク

居候「何だとテメェ」

商人「いいかい、魔王はその気になれば、魔物集団を人間の住む所に放つことができる。人間達はそれに恐怖してるのさ」

居候「その気になれば、だろ…。実際の魔王を見もせずに恐怖するなんて、バカでねーの」

宿屋「けど、おかげで強くて小金持ちの、勇者を目指す冒険者がわんさか来るわけだよ。ひひ、笑いが止まらねぇや」

僧侶「でも、その内魔王さんが討たれてしまうかもしれませんねぇ…」

宿屋「討たれマセーン。魔王さんたら冒険者にレベル上げさせない為に、魔王城以外では強い魔物配置してない策士デース。ぬるい魔物相手にして鼻高々になってる冒険者は、魔王城で心がポッキリ折れる仕様デース」

居候「そんで、どうやってレベルカンストしたんだよ2人は」

僧侶「先代…今の魔王さんのお父様の時代は、もっと厳しい時代でしたから」

居候「へー、そうなん。じゃ、やっぱ優しいじゃん今の魔王は」



居候(世界は魔王を恐れているようだが、俺たちは魔王を恐れていない)

居候(俺はこの世界をよく知らないし、今更「普通の人たち」に溶け込める気もしない)

居候(全世界のほんの一部に過ぎない、この休憩所。それが、俺の世界だ)




居候(魔王への恐怖心は存在せず、魔王に最も近い、そんな場所――)
7: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:12:59.92 ID:xRD8RazP0
魔王城

居候「こんちゃーす、魔王。客から一杯お菓子貰ったから一緒に食おうぜ~」

魔王「おい魔物、何ですんなり通したんだよ…」

魔物「だって、ご近所さんじゃないですか」

魔王「俺は認めてないぞ!まぁどうせ、俺を倒しに来たわけじゃないだろうしな…でも早く帰れよ」

居候「冷たいなぁ魔王、俺ら幼馴染みたいなもんじゃん」

魔王「馴染んでいるのは確かだな…。不本意にも」

居候「俺も魔王に馴染んでるよ。不本意じゃないけどね」

魔王「ふん。…しかし、魔王城付近で捨てられていたお前を、あいつらが拾ってから10年は経ったか」

居候「昔は俺の方が大きかったのにな~」

魔王「そりゃ男女差も種族差も出てくるし、魔王に即位してからはあいつ(宿屋)と毎日のようにドンパチやってたからな。体も成長するわ…」

居候「ははは、そうだね~」(あの休憩所、いつからあるんだよ…)






宿屋「んーと、お前を拾ったのと休憩所を建てたのが同じ年だから、丁度10年だな」

僧侶「ふふ、魔王さんの世代交代とほぼ同時期でもありますしね。時が経つのは早いですねぇ」

商人「アタシが合流したのは結構後だね。それにしてもこの世界、10年前よりは随分平和になったもんさね」

宿屋「ま、先代の魔王殿は凄かったからなぁ。俺らも冒険者時代、それはそれは苦労したもんだ」ウンウン

居候「なぁ宿屋、何で冒険者をやめて宿屋になったんだ?」

宿屋「そりゃ…俺らも旅の中で、こういう休憩所が欲しいと思ったからだよ。なー」

僧侶「そうですねぇ。回復地点が無いと、MPを節約しなければなりませんしねぇ」

居候「宿屋って無茶しそうだしな、サポート大変だったしょ僧侶さん」

宿屋「お、聞きたいか俺の冒険譚?」ニヤァ

居候「ご勘弁願いたいです」
8: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:13:30.51 ID:xRD8RazP0



魔王「まーた昨晩も邪魔しやがったなァ、いい加減にしろーッ!」

宿屋「いやー、まさか軍隊が攻めてくるとはねー。全員殺してたら、正に恐怖の大魔王になっていましたね魔王くーん」

魔王「全員生還したのは誰のせいだああぁぁっ!!今日こそ貴様を葬ってくれるわああぁぁッ!」ドゴーン、ガガガガ

宿屋「甘い甘いッ、当たんないよ~だ♪」



僧侶「魔王さん腕を上げてますねぇ…宿屋さん、その内負けちゃうかもしれませんねぇ」ズズズ…

商人「ハハ大丈夫、装備のグレードを上げれば宿屋も更にパワーアップすっから」

居候「ヤベー。更に調子こきそうでウゼー」



居候「魔王お疲れー。はい、冷たいお茶」

魔王「ゴクゴク悪いな…次は覚えてろよ…」トボトボ

居候「じゃあなー」

商人「魔王ったら居候の淹れたお茶は素直に飲むねェ~。流石幼馴染」ニヤニヤ

僧侶「そうですねぇウフフ、お2人ともお年頃の男女ですから…」

居候「?」

宿屋「こんガキにゃまだはえーよ。そうなったら父ちゃん悲しゅうて悲しゅうて…」ウウゥ

居候「誰が誰の父ちゃんだよ、アホ」



居候(ここはきっと、世界のどこよりも平和な休憩所)

居候(恐怖心はなく、のんびりとした日常と程よい刺激がある、そんな平和な――)
9: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:14:00.24 ID:xRD8RazP0



騎士A「フゥ…話には聞いていましたが、こんな所にこんな休憩所があるとはな」

騎士B「ふぅ、助かった…」

僧侶「ごゆっくりどうぞ。こんな団体さんはお久しぶりですわ」

騎士C「それにしても、こんな危険な場所に施設を置いたら、魔王に狙われませんか?」

宿屋「いやぁ、別にそうでもないですよ~。魔王とは持ちつ持たれつでウグッ」

僧侶「ふふ、魔王にとっては取るに足らない存在なのですわ」(宿屋さん、魔王さんと馴れ合っていることを知られてはいけませんよ)ギュウゥ…

騎士D「…不思議だ。貴方がたには、我々の持っている「恐怖心」が一切感じられない」

僧侶「恐怖していては人助けなんてできませんわ。ねぇ宿屋さん?」

宿屋「そ、そうそう」ゲホッゴホッ

騎士D「…10年程前か、「勇者」が姿を消したのは」

宿屋「…!」



騎士D「かつて、魔物により支配されていた街を次々と開放に導いていった戦士がいた…彼はいつしか「勇者」と呼ばれるようになった」

騎士D「人々は彼の姿に、自然と魔王討伐の期待を抱くようになった」

騎士D「そして勇者は我々の期待に応え、仲間を引き連れ魔王城を目指した」

騎士D「だが、それから勇者は帰ってこなかった――」



宿屋「……魔王城でおっ死んだんすかねぇ。その頃はまだ休憩所も無かったんで」

騎士D「実は――私は勇者を、何度か見かけたことがある…」

僧侶「…!」

騎士D「随分と風貌が変わったが――面影は残していますな?」

宿屋「――っ!」
10: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:14:29.28 ID:xRD8RazP0
魔王城

居候「何か豪勢な騎士集団が来たから、俺は遊びに行ってろだとよ。ちぇー、どうせ礼儀のなってねーガキですよーだ」

魔王「それで当たり前のように魔王城へ来るな…。まぁ、確かにお前からは品が感じられん。あのバカ(宿屋)に育てられたから仕方ないかもしれんが…」

居候「ふーんだ、魔王の知り合いには同族の、それはそれは可憐なお嬢様わんさかいるんでしょうね~」

魔王「いや、魔王というのは特別だから同種族がいないんだよ。血は濃いから、異種族と交わっても魔王の力を受け継いだ子孫はできるが…」

居候「え、そうなん?」

魔王「お前、本当何も知らないな…」

居候「ははは、必要ないことは知らないの」



居候「何でも、知ればいいってもんじゃないんだよ」
11: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:15:00.52 ID:xRD8RazP0
居候「ただいまー。あ、豪勢なお客さん達帰ったんだな」

僧侶「え、えぇ…」

居候「…あれ、宿屋どこ行った?」

僧侶「街の方へ降りて行かれました…少しの間、帰らないでしょう」

居候「あ、そなの。うるせーのが片付きましたなぁ~、商人さんも街に行商だし」

僧侶「………ねぇ、居候ちゃん」

居候「ん、何?」

僧侶「…宿屋さんには、秘密にしておいてほしいと言われたのですが…」

居候「じゃあ、秘密にしときなよ」

僧侶「え?」

居候「人の秘密話すのは良くないと思うぞ。そういう人、信用無くするよ?」

僧侶「…そう、ですね」

居候「そゆこと。じゃ、風呂入ってきま~す」

僧侶「…」





居候「ふー…」(それにしても、宿屋の秘密かー…そもそもあいつ、謎の多い奴だしなぁ)

居候(育ての親に対して関心なさすぎかなぁ。でもまぁ、宿屋は話したいことなら話す奴だしね)

居候(気にならないわけじゃないけど、あいつが秘密にしたいことを無理に知る必要もないし)

居候(いいんだよな、これで――)
12: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:15:34.46 ID:xRD8RazP0
>翌日、城――

王「久しいな――まさか魔王城の傍で商売をしているなど、思いもよらなかったぞ」

宿屋「…」

王「10年前――ワシが命じたことを、忘れたか?」

宿屋「…不可能だった、と言ったら?」

王「それが通用するとでも?」

宿屋「…」

王「今再び命じよう―――勇者よ」




魔王「んっ、寒気が…」

居候「風邪か魔王?」

魔王「そんなヤワではないぞ…馬鹿で風邪ひかないお前程ではないがな」

居候「馬鹿でも風邪はひきますぅー。じゃあ今日は帰るから早めに休んでおけよ、魔王」

魔王「あぁ、帰れ帰れ」

居候「おう、帰りまーす」トコトコ

魔王「…
あ、あのな」

居候「ん?どったん?」

魔王「お前が来るのは迷惑だが…お、俺に変な気は使うなよ、かえって気持ちが悪い」

居候「…というと?」

魔王「あ、あああぁぁうるさい!とっとと帰れ!///」

居候「へいへいへ~い」(熱でもあんのかなコイツ)




宿屋「…」

宿屋「…バックれるのは簡単だ、だが…」

宿屋「………」

宿屋「…………潮時、かな」
13: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:16:01.24 ID:xRD8RazP0




居候「ベッドメイクに掃除、調理の下ごしらえ…くそぅ宿屋がいないせいで、なかなか遊びにも行けねー」

居候(急な来客に備えておかないといけない…けど、ここんとこ客なんて全く来てないんだよなぁ)

居候(つか、僧侶さんもどっか行っちまったし…)

居候「…『ご自由にお使いください』っと。よし、看板完成~」

居候「今ゆくぞ、魔王!なーんつって、ハハハ」






魔王(ここ数日、侵入者が来ないな。それに来客も…)

魔物「魔王様、ご近所のお客様です」

魔王「!そうか…じゃなくて、すんなり通すな!ま、まぁいい通せ」

魔王(いつも帰れ帰れ言ってたから気にしてるのか…今日は言わないように…)


宿屋「…よぉ、魔王君」

魔王「ってお前かよ」チッ

宿屋「悪いねぇうちのお嬢ちゃんじゃなくて。君の嫌いな宿屋さんだよ」

魔王「あ、あいつに来てほしいわけじゃ…まぁ確かにお前の顔は見たくないが」

宿屋「…それ、叶うかもしれねぇぜ」

魔王「……は?」

宿屋「顔を合わせるのは、今日が最後になるかもしれない――」チャキン



宿屋「殺し合おうぜ、魔王」

魔王「――――!?」
14: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:16:36.70 ID:xRD8RazP0
宿屋「魔王がお前に世代交代してから魔物の影響は変わったが、それも魔王の気まぐれだと思われている――そもそも「一般の人間」達は、ここ10年の間に魔王の世代交代があったのは知らないんだよ」

宿屋「先代、お前の親父は魔物を使って人間の街を制圧したり殺したり、容赦なかった。」

宿屋「しかし――お前の代になってから強い魔物は魔王城に配置されるようになり、冒険者がなかなかレベルを上げられない事態が発生したわけだ」


宿屋「それもこれも全部――お前が、臆病だからだな」

魔王「…っ!」

宿屋「強い冒険者が攻めてくるのが怖い。人間が強くなるのが怖い。人間に憎まれるのが怖い――」

魔王「そ…れは…っ」

宿屋「けどな、まだまだ「一般の人間」達は「魔王」を憎んでいる――だから、「勇者」が必要とされる。勇者は討たなきゃいけないんだよ――魔王を」

魔王「まさか…お前が!?」

宿屋「…否定したいとこだが」ヒュン…


宿屋(勇者を作るのは、勇者自身の意思でなく――)ズバアアアァァァン


魔王「が…ッ!」

宿屋「…いい防御だ。魔王の名に恥じない。けど、俺相手には弱すぎる」

魔王「く…!」



魔王(こいつが俺より強いことなんて、散々やり合ったからわかってる…けど、今までこいつの攻撃を受けたことなんてない…!)

魔王(…こいつが攻撃に転じたら、俺――)

魔王(討たれる――のか?)


宿屋「…嫌な気分だ――なっ!」ヒュンッ…

魔王「―――ッ!」




居候「宿屋ァ―――――ッ!」

宿屋「!」ピタ

魔王「!」
15: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:17:05.52 ID:xRD8RazP0
居候「おいテメェ…何やってやがるんだ!?」

居候(冗談じゃないことくらいわかる…!魔王は怪我してるし…それに宿屋の野郎、魔王に襲いかかろうとしていた――今まで、見たことないような顔をして!)

宿屋「チッ」

宿屋(見られちまったな――1番見られたくない奴に)

居候「おい宿屋!何やってんだつってんだよ!」

宿屋「――義務を果たしに来た」

居候「……は?」

宿屋「魔王を討つ――義務だ、勇者の」

居候「………勇者?え、な、何ふざけて…」


?「本当のことですよ」


居候「!」




僧侶「…本当の、ことですよ」

居候「僧侶…さん…」

僧侶「宿屋さん…彼は10年前姿を消した勇者…人間達の希望」

魔王「お前が――」
16: ◆WnJdwN8j0. 2014/06/18(水) 17:17:39.37 ID:xRD8RazP0
魔王(10年前、魔王だった父上は勇者に討たれた――しかし息子である俺の存在を知らなかったのか、その後勇者は魔王城から立ち去った)

魔王(その勇者が――あんな間近な場所に休憩所を構えていただと……!?俺もまだ即位していない、わずかな「魔王不在の期間」に!)

魔王(では…何故こいつは今まで、俺を――)


宿屋「お前のことは嫌いじゃなかったな、魔王。むしろ…」

魔王「―――は?」


宿屋「…先代と違い、人間達に悪さをするわけでもなく――」

宿屋「魔物達の頂点に立てる力を持ってる癖に、強い魔物達を自分の周辺から手放さない程に臆病で――」

宿屋「それで、からかったら真っ赤になって反応してくる。そんなお前が――」チャキ

居候「宿屋、お前――!」

僧侶「………」


魔王(こいつ本気だ…殺される…!)

宿屋「…」ダッ

魔王(く、くそっ、殺されて、たまるか――っ!)バッ

宿屋「魔王ォ――――ッ!」

魔王「ああああぁぁ――――ッ!」





――――ザシュッ




居候「…!」

僧侶「……え?」

魔王「は……!?」


宿屋「―――っ」


>そこで血まみれになっていたのは、魔王ではなく、優勢であったはずの宿屋の方であった。
宿屋は血が吹き出る傷口を防ごうともせず、魔王の目の前で立ち尽くすだけであった。
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