八幡「贈り物には想いを込めて」

1: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:24:53.61 ID:7IXBXgnJ0
  • 俺ガイルSS
  • 地の文有り
  • キャラの心情に関しては自分なりに解釈しているところがあります
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2: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:29:51.93 ID:7IXBXgnJ0
まだ薄暗い部屋の中で目が覚めた。
脚だけが熱を帯びているようなじわりとした倦怠感がある。。
擦りむいた傷口の違和感と筋肉の張りはまだ残り、疲れが取れていないことを知らせていた。

布団の中で暫くウダウダしていたが、起床時間が迫ってきたので仕方なしに重たい身体を起こす。

月末のマラソン大会から3日が経過し、カレンダーは1枚めくられ2月になっていた。
大会翌日の筋肉痛はぐわあああああああーーーーーッ!と某獣王ばりの叫びをあげたいレベルだったが今は多少落ち着いている。
クロコダインさん馬鹿にすんなよ?獣王激烈掌カッコいいだろうが。
どうでもいいが、色ピンクなのな。勝手に緑だと思い込んでたぜ。

家を出て自転車に跨り走りだす。

天気予報では特に気温が低いとは言っていなかったが、風が強いためか体感気温はぐっと寒く感じた。

マフラーと顎のわずかな隙間に寒風が入り込みブルッと体を震わせてしまう。ああ寒い。千葉の冬って雪とかほとんど降らないくせに本当に寒い。
千葉以外の土地で冬を過ごしたことがないので、あまり比較はできないが。
なんなら一生千葉から出たくない。もっと言ってしまえば働きたくない。

少しだけマフラーをキツく巻きなおし、いつもの道を走らせた。
3: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:32:44.70 ID:7IXBXgnJ0
そそくさといつも通り教室に入り、そっと椅子を引いて腰掛け、自分の机に腕を枕にして突っ伏す。
あー学校来た途端に帰りたくなるぐらいダルイなー、もうダメだ。一歩も動きたくない。

朝から自堕落な念にかられていると、ふと左側に気配を感じた。
おもむろに顔を上げると、そこには天使がいらっしゃった。

「おはよう! 八幡!」

「おはよう戸塚。今日も可愛いぞ」

相変らず学校指定のジャージに身を包んだ天使もとい戸塚と挨拶を交わす。
というか戸塚の制服姿って見たことないな……。思わずスカートの方を想像してしまう

俺は悪くないよね?悪くないよね?でも男子の制服でもものすごい美男子っぷりを発揮しそうだから一度は見てみたい。

「か、かわいいって……ぼく男の子なんだけどな……」

「はは、悪い悪い」

まあ本心なんですけどね。あぁ~ほんと癒されるわ。
少しばかり呆けていると、こちらをきょとんとした表情で戸塚が見つめているのに
気が付いた。その顔もいいな。写真撮って家に飾りたいレベル。

「どうした?」

「いや、何となくだけど八幡疲れてる?」

「ああ、まあちょっとマラソンの疲れがあるな。これでも楽にはなったけど」

眉尻が下がった、本当に心配そうな表情で尋ねられた。こんなん惚れてまうやろ~。
戸塚だって同じ距離を走っているのにまったく疲労の色は感じない。
今日だって朝練をこなしているはずだし、なんだかんだ言っても運動部の部長なんだなと感心してしまう。
4: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:34:50.69 ID:7IXBXgnJ0
「そっかぁ。八幡頑張ってたもんね。疲れてるときは無理しちゃダメだよ。ちゃんと
身体のケアはしてね」

「おう。戸塚も……なんていうか、ありがとな。感謝してる」

「あはは。いいって、友達、でしょ?」

俺にしては珍しく素直な返答が出来たと思う。
しかしまあ、戸塚の少し上気した頬でこちらを窺うような調子は一瞬ドキリとさせられる。
本当に間違っちゃいそう……。いかんいかん戸塚は男、戸塚は男。

「ああ、そうだな……」

「うん!あ、チャイム鳴ったからまたあとでね!」

ちょっと恥ずかしくて思わず素っ気なく答えてしまった。
友達、友達か。
思わず顔の表情が緩む。
ニヤついていつもの気持ち悪い表情(自覚あり)になってそうだったから、改めて机に突っ伏して誤魔化した。
よーし、今日はちょっとだけ頑張れる気がしてきたぞー。

―――――
―――
――
5: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:36:41.94 ID:7IXBXgnJ0
そんな朝の出来事でちょっとだけ元気をもらったわけだが、授業をこなすにつれてパワー切れを起こす我が肉体である。
結局授業ではほとんどの内容を聞き流し、午後の数学は完全に寝て過ごして放課後となった。

本日も社畜よろしく、決まった場所に決まったルートで決まった時間通りに向かう。
もはや身体に染みついてしまった事に今更驚くことなど何もない。

放課後の解放感からかやたらとテンションの高いクラスメイトたちを尻目に、静かにコートを羽織り、マフラーをやや適当に巻いて
鞄をいつものように背負い教室前方の出口へ進む。
出るときに左目でちらと教室の後方、リア充たちの巣窟を見やると、三浦達と談笑しながら身支度をする由比ヶ浜と目が合った。

目が「ちょっと待ってて」と訴えかけているような、そんな気がしたので教室を出たところのいつもの定位置で壁に背を預けて待つ。

壁に体重を預けるとコートを着ていてもヒヤリとした温度が伝わってくる。
いや、むしろ逆だったか。物体に体温を吸収されるから、ヒヤリと感じるらしい。

金属を触って冷たく感じるのは熱伝導率が高いから熱を吸収しやすいとか何とか……。

理系じゃないから詳しくはわからないが、小学校くらいの時に聞いてへー、と感心した記憶がある。
6: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:38:51.77 ID:7IXBXgnJ0
ものの1分ほどでガラリと扉が開けられ、きょろきょろと周りを見ながらパタパタとした
足取りで教室から由比ヶ浜が出てきた。

待っていたこちらと目が合うと、花が咲いたような笑顔でこちらに近づいてくる。

「ごめんね~ヒッキー、待たせちゃって」

「いや、まあ気にすんな。俺が勝手にここにいただけだし」

少しだけ目を見開いたあとにクスリと、微笑ましいものを見るような目で見つめられると
何となく居心地が悪く、思わず少しばかり身を捩った。誤魔化すように悪態をつく。

「何かしら由比ヶ浜さん。あなたのその顔、ちょっとムカつくわ」

「ムカつくってなんだし! てかゆきのんの真似うまくて反応に困るし!」

「はいはい。……行くか」

やや決まりの悪くなってしまった顔を見られないように、そっぽを向いて特別塔の部室へと足を向けた。

ちょっと待ってよーと慌てた様子で後ろから由比ヶ浜が追いついてきて、並んで歩きだす。
俺よりもいくぶん小柄な彼女に歩調を合わせていると、ひとりで歩いているよりも随分とのんびりしたペースに感じた。
7: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:41:27.81 ID:7IXBXgnJ0
「今日は依頼くるかな?」

右隣を歩く彼女がこちらを少し覗きこむように、身長差のせいもあり上目遣い気味に話しかけてくる。

「さあな。来ない方がいいんじゃねえの?」

「え~、なんで?」

ぶーと口をとがらせて、先ほどと同様にこちらを見上げる。
歩調に合わせてリズミカルに髪が揺れ、覗きこんだときにさらりと流れた。

実際依頼なんてない方が良いはずなのだ。それだけ悩みを抱える生徒がいないとも言える。
しかし、依頼がない=悩みを持つ生徒もいない、という単純な等式は成り立たない。

人に言えない悩みだってある。相談するとしても、相談相手を選ばなければいけないような悩みもあるだろう。
少なくとも俺なら、知らんやつに何かを相談する気にはならない。

それに、奉仕部は大々的に活動をアピールしている部ではない。
あくまで平塚先生からの紹介などで、依頼者が訪問する場合がほとんどだ。ゆえに自発的に部室を尋ねてくる生徒はほぼいない。
……窓際族ってこんな気分なのだろうか?

「そうだな……依頼がない方が早く帰れるし、何より俺が楽できる」

「なるほど……って理由がすっごく自分勝手だ!?」


1秒でも早く帰りたいに決まってんだろ。今日は特に疲れてるしな。

由比ヶ浜が振ってくる他愛もない話に適当に答えつつ歩を進める。

由比ヶ浜主導で話は進み、それに俺が答えるスタイルは変わらない。

目的の場所が近づいてきた。西日に照らされ、やや紅色に光を反射した特別塔の廊下を進み、部室の扉を開ける。

がらりと抵抗なく開かれた扉の先には、いつもと変わらぬ様子の部室の主が背筋良く、椅子に足を揃えて文庫本を手にして待っていた。
8: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:43:54.91 ID:7IXBXgnJ0
「こんにちは」

「うす」

雪ノ下と短い挨拶を交わし定位置の、彼女の対角線上に置かれた椅子に腰かける。

「やっはろー! ゆきの~ん会いたかったよ~」

「こんにちは、由比ヶ浜さん」

優しげな微笑みを向ける雪ノ下に、嬉しそうにじゃれつく。
元気な足取りで椅子をガタっと引き寄せ、雪ノ下の方へ距離を詰めてえへへーと笑いかけている。

「由比ヶ浜さん……ちょっと近いわ」

「えーこれくらい普通だよ? ダメ?」

「もう……」

仕方ない子ねと、わがままだけど可愛い我が子を見る母親のような、そんな慈愛に満ちた瞳にも見える。


雪ノ下は少し変わった。外見的変化ではなく、内面的なものなのでわかりづらいが、端的に言えば雰囲気が柔らかくなった。

以前から持ち合わせていた凛とした佇まいも健在ではあるが、この空間では暖かい雰囲気が前面に出ているように感じる。
9: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:47:05.18 ID:7IXBXgnJ0
つーか、ゆるゆりしてるところ悪いが俺もいるんだけど。

完全においてけぼりにされているが、よく考えずともいつも通りのことなので
俺もいつものように鞄から文庫本を取り出し挟んでいた栞を抜く。

えーどんな展開だったかなと思い出そうとしたところで、対角線上に座る雪ノ下からの視線を感じた。

首だけをそちらに向けると、何か言いたげに、所在なさそうな様子でこちらをじっと見ている。
こいつがこういう、もじもじした様子ってあんまり見ないな……。

不覚にもちょっとカワイイとか思っちゃったよ。これがまさかギャップ萌えってやつか。本人には絶対に言わないよ?
言ったら何されるかわからんし怖いし。

「……なに。どしたの?」

はっ、と一瞬だけ目が見開かれた。少し視線を外して、ぽそっと呟く。

「いえ、大したことではないのだけれど……怪我はもう大丈夫なの?」

瞬間的に、保健室でマラソン大会で出来てしまったキズの治療中の出来事を思い出してしまう。

至近距離で、お互い触れそうな距離で見つめ合った、2人だけの空間。
気恥かしくて、視線をやや右上の方に逸らしてしまった。

「あー筋肉痛はあるけど、だいぶ良くなったな。擦過傷が風呂に入った時に少し痛むくらいだ」

あかん。雪ノ下の方を直視できない。努めて何にもないように、平静を装って答える。

雪ノ下は胸を撫で下ろしたような、そんな安心したような表情を見せながらも俺にちくりと一言攻撃、もとい口撃してくるのは忘れない。


「そう、それは良かった。やはり再生能力が高いのね」

「おい、それどういう事? 暗に俺がゾンビみたいって言ってるの?」

「いつもそう言っているじゃない?」


きょとんと小首を傾げて笑いかけるな勘違いしちゃうだろうが。

話の内容的には色気も何もあったもんじゃないんですがね。何となくいつもの調子が戻ってきたように思う。

横で見ている由比ヶ浜は「むーなんか良いふいんき」とか言ってるし。
10: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:48:27.13 ID:7IXBXgnJ0
「由比ヶ浜。どうでも良いけどふいんきじゃなくて、ふんいきな。ふ・ん・い・き」

「へっ?あっべ、べつに間違ったわけじゃないし! それに意味は通じてるからオッケーだもん!」

「由比ヶ浜さん。正しい日本語を覚えましょう?」

「ゆ、ゆきのんまで……うー」

悔しそうに、唸りながら身を小さく捩っている姿を見ると本当に犬のように見えてくる。
というかこいつ、ほんとよく総武高に合格できたな……。

「そ、そういえばもう少しでバレンタインだね!」

自らに不利な旗色になっていたのを打開しようとしたのか、由比ヶ浜のやや上ずり気味な元気な声が室内に響いた。
11: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:51:03.33 ID:7IXBXgnJ0
バレンタイン。
2月14日に女性が親愛の情をこめて男性にチョコレートを贈る、というのが一般的だろうか。
現在は義理チョコ、友チョコなどと範囲は広がり、今では男性から女性に贈る逆チョコなんてものもあるらしい。

日本国内の年間のチョコ消費量の2割がバレンタイン近辺に集中することから、各製菓会社が義理チョコや友チョコ、逆チョコといった
新概念を頑張って考えているとか。飽きられたら終わりだからなーこういうのって。必死に考えもするのだろう。

しかしまあ、露骨に話変えてきたな。

たしかに毎年この季節になるとウザいぐらいに各社チョコ関連のCMばっかだし、スーパーやコンビニに行けば
店内に入って一番目に付く場所にバレンタインフェアとかでコーナーが出来ていたりするものだ。
避けようとしても嫌でも目に飛び込んでくる。

男子たちは無駄に浮足立っているし、女子たちは年1回のイベントにこれまた色めき立つ。
ほんと高校生とか大学生ってそういうイベントごとが好きだよな。というか日本自体にそういうところがあると思う。

俺にとっては365日のうちの1日にすぎん。べ、別に強がってなんかないし!

リア充グループに属する由比ヶ浜のことだから、そういう流行りものの話を振ってくる気持ちはよく分かる。

「ああ、そうだな」

「ええ、そうね」

「反応薄すぎ!? もうちょっと話広げようよ!」
12: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:53:44.24 ID:7IXBXgnJ0
とは言ってもだな……。俺も雪ノ下も多弁な方ではないから、基本的に話を振られて会話をするタイプだ。
それに加えて話題はバレンタイン。そんなリア充イベントに縁があると思うか?いや、ない!(反語)

その事に関しては雪ノ下も同様だろう。彼女の優れた容姿に魅せられた異性から好意を寄せられはしても
雪ノ下が誰かに好意を寄せるところはまったく想像ができない。

特にバレンタインやクリスマスのような異性に好意をアピール(笑)するようなイベントには縁遠そうに思える。
そういう意味では将来的にひらつ化しそうだよな。おっとこれ以上は止めておこう。

「バレンタイン。起源は諸説あるけれど、ローマ皇帝の迫害で殉教した聖ヴァレンティヌス司祭に由来するキリスト教の記念日とされているわね。
日本では女性から男性へ親愛の情を込めてチョコレートを贈るというのが一般的だけれども、キリスト教圏では特にそういった文化は一般的ではなく、
日本の独自文化であるとも言われているわ」

淡々とした調子でバレンタインうんちくを読み上げる雪ノ下さんであった。
俺も海外ではチョコを贈る文化はないってことは知っていたが、起源まですらすら出てくるあたりは流石の博学さである。

「さすがユキぺディアさんだな」
「ほえーそうなんだ……。やっぱゆきのん物知りだねー」

俺の感想に続いて、由比ヶ浜も感想を述べた。

「そうでもないわ。この程度なら一般常識の範疇よ。あと比企谷くんはその不愉快な呼び方をやめなさい、通報するわよ?」

「俺にだけ当たり強くない? 泣くよ? 泣いちゃうよ?」

「あはは……ドンマイだよヒッキー」

泣きそうになる俺を由比ヶ浜が励ましてくれる。雪ノ下はふふんと楽しそうな様子だ。
俺をいじめてる時だけウキウキしているのは気のせいでしょうか?

今度は何か思いついたのか、由比ヶ浜が雪ノ下に声を掛けた。
13: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:55:22.56 ID:7IXBXgnJ0
「ゆきのんは毎年バレンタインは誰かにプレゼントとかするの?」

「そうね……昔は家族にしていたけれど、最近は特にないわ。毎年クラスメイトの女子からいただいてばかりね」

「女の子から貰うんだー。ゆきのんモテモテだね! あたしもチョコあげるからね!」

ふんふんと感心した様子を見せたと思ったら今度はにこぱーとした表情に変わる。
ころころ変わる表情は見ていると退屈しない。しかし由比ヶ浜のチョコか……。

「そういうわけではないけれど……。あと由比ヶ浜さん、チョコを作るのなら絶対に味見をしてね?もしくは既製品でもかまわないわ」

「んー、なんか馬鹿にされてる?」

「気のせいではないかしら」

されてるな。主に料理の腕に関して。
手作りチョコ(笑)なんて言ったって、やってることはチョコを溶かして冷やして固めるだけだし、何も難しいことはないと思うんだが。

料理下手なやつはオリジナリティを出そうとして、無駄なアレンジをレシピに加えていることが大半だ。
レシピも忠実に再現できないで何がアレンジか。隠し切れない隠し味は止めて欲しい。

以前作っていたクッキーよりチョコづくりの方が遥かに難易度が低いとはいえ、何をするかは想像できる。

ベタなところで言うと湯煎とかいってお湯にチョコ溶かしてそう。間違いない。
14: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 21:57:22.97 ID:7IXBXgnJ0
「今年は……誰かにあげるの?」

由比ヶ浜が少しおずおずした、様子を窺うような調子で尋ねる。
相手の出方をみるような、自信のない事柄に対する確認作業のような、そんな口ぶりに聞こえた。

「今年は、そうね……少し、考えているわ」

煮え切らない返事をした雪ノ下の方へ顔を向けると、何故かちょうどこちらを見た雪ノ下と視線が交差する。
交差したと思ったらプイッと逸らされた。
なんでちょっと顔が赤いんだよ……。

「あ、じゃああたしチョコ作って来るから交換しようね!」
「ええ、構わないわ。ただ先ほども言ったように味見をしっかりね?」

「まったく信頼されてない!?」

ショックを受けてうー、とかヒドイ、とかぶつぶつ呟く由比ヶ浜に、くすくすと楽しそうに笑う雪ノ下。仲良いですね本当。

「そうだ! ヒッキーは去年はいくつチョコ貰ったの?」

え、何か副音声で「まさか貰ってるわけないよね?」っていうのが透けて見えるんだけど。

しかし、黙っていればこの話題から逃れられると思ったがそんなに甘くはなかった。
下手に誤魔化した方が後々面倒くさそうなので、ここは正直に答えておくのが得策だろう。
15: ◆D04V/hGKfE 2015/06/15(月) 22:00:16.96 ID:7IXBXgnJ0
「ひとつだな」

「え、ウソ! もらったの!? 誰に!?」

答えた瞬間由比ヶ浜は驚愕の表情を浮かべ、その向こうの雪ノ下の肩がピクリと跳ねた後に
胡乱げな瞳でこちらを見つめてくる。
その反応は非常に失礼だと思うのですが、何、俺が間違ってるの?

「小町からもらったぞ。愛がたっぷり詰まったやつな」

口の端をにやりと歪ませた気味の悪い表情で答える。
自覚があるのは良いことだと思います。うん。俺は悪くない。こんな話をするこいつが悪い。

「あなたの事だからそんな事だとは思っていたけれど……その表情は止めなさい。
見ていて心臓に悪いから」

ふっと嘲るようなニュアンスで馬鹿にされた上に、遠まわしにキモい死ねって言われちゃったよ……八幡悲しい。

てか心臓に悪いってなんだよ。嫌なら見るな!嫌なら見るな!


「あ~小町ちゃんね。それ以外にはなかったの?」

「まだこの話題続くの? さっきから俺の精神ゴリゴリ削られてるんだけど」

「だ、だって……。気になるんだもん……」


何でそんなウルウルしてるんだよ……はぁ仕方ない。ここは俺の持つ108のトラウマ話の1つをしてやろう。

「去年は小町の1個だけだ。中学の時は同級生に貰ったことあるが」

「その話! 詳しく聞きたいな!」

こちらに少し身をよじってガタっと椅子から身を乗り出すように近づいてきて覗き込んでくる。
動いた拍子だろうか。グッと距離が近づいたこともあり、いつも好んでつけているであろう柑橘系の爽やかな匂いが鼻孔に伝わる。

ちょっとさっきからこの子の気合の入り様は何なの?てか近いんだけど。パーソナルスペースが狭いのかしらん?
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