曙「クソ提督と手を繋いだら放れなくなった」

3: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:34:54.60 ID:nh3uhJbUo
曙「なんでこうなったのよ」

提督「…」


曙「全く、冗談じゃないわ!」

提督「そんな事言ったって、しょうがないじゃない」

提督「それにあれは事故なんだし…」


曙「だからって、だからって…」

曙「なんで私がクソ提督と、一日中手を繋がなくちゃいけないのよ~!」



左の手のひらだけがさっきからずっと、汗ばんでいるのを感じて。

早鐘をつく様な胸のドキドキを悟られないようにしながら、私は喚いた。
スポンサーリンク
4: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:36:07.63 ID:nh3uhJbUo
全く、なんで僕が嫌われなくちゃいけないんだ…。

女の子の手を握っていることを意識して、緊張して強ばった右手の力を緩める。

曙さんの悲鳴を横で聞きながら、僕はこの騒動の発端を思い出すのだった。



夕張「提督、いつもの開発のご報告なのですが」


提督「うん、ありがとう…って、これは何?」


夕張「新兵装を作ろうとしたら失敗しちゃって」
5: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:38:00.15 ID:nh3uhJbUo
えへへ、と可愛く笑うのは鎮守府の開発担当をしている夕張さんだ。

艦載機や砲の他にも役に立ちそうなアイデアがあればこうして実験してくれる。

画期的な兵装を開発してくれたこともあるんだけど…これは。



提督「なに、これ。おもちゃのステッキ?」

夕張「提督、持ってみて下さい」

提督「え、これでいいの?」



促されるまま、夕張さんが開発したというステッキ(?)を手に取る僕。

これにどんな効果があるっていうのだろうか。
6: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:39:06.98 ID:nh3uhJbUo
夕張「いま、提督の手に磁力が溜まっています」

提督「磁力!?」

提督「凄いじゃないかこれ」


提督「じゃあよっぽど役に立つ効果が…」

夕張「この状態で誰かと手を繋ぐと、手と手がくっついて放れなくなります!」

提督「なんてもの開発してんのさ!」


慌ててステッキから手を放して机に置く。

何でこんな意味もない迷惑なものを作るんだろう?

ロマンがどうとか言われても、サッパリ意味が分からないよ。
7: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:40:16.45 ID:nh3uhJbUo
夕張「元々は深海棲艦鹵獲用に作っていたんですが…」

夕張「よく考えたら深海棲艦と手を繋ぐってありえませんよね!」

提督「あのねえ…」


夕張「でもですね、失敗作とはいえ開発は開発」

夕張「出来れば効果を試したいんですけれど、どうでしょう?」

提督「駄目に決まってるでしょ!」


こんなものが誤作動でもしたら、鎮守府の任務に支障が出てしまう。

とにかく一度僕が没収して様子を見るとしよう。


思えば、これが油断だった。

彼女たちの帰投時間を把握していたくせに、何故机の上に出しっぱなしにしたんだろう?
8: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:42:24.58 ID:nh3uhJbUo
漣「艦隊帰投ですよ、ご主人サマ!」

朧「第七躯、帰ってきました!」

提督「漣さんに朧さん、おかえり」


潮「あ、あのう…」

提督「潮さんも、おかえり」


提督「みんな無事かな?」


出撃から時間通り帰投してきた第七駆逐隊のみんなが戦果を報告しに来る。

漣さんと朧さんは元気良く、潮さんはみんなの姿に隠れながら。

そして、最後の一人は…。
9: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:43:08.30 ID:nh3uhJbUo
曙「みんな無事かなんて、見れば分かるでしょ?」

潮「あ、曙ちゃん!」


提督「曙さんもおかえり」

曙「…フン」


提督である僕にかしこまった態度を取る艦娘の方が少ないこの鎮守府だけど。

ここまで辛辣な態度をとられることは、そうそうない。



潮さんが慌てて執り成そうとするのも相手にせず、彼女はそっぽを向いた。

人間でいえば同い年くらいの目の前の女の子を見て、僕はいつも思うんだ。

…何か嫌われるような事をしたっけ、って。
10: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:43:46.94 ID:nh3uhJbUo
漣「そういえばご主人サマ、何してたんですか?」

朧「夕張も。もしかして大事な任務の話だった?」


まさかヘンな秘密道具の話でしたなんて言うのも格好がつかなくて。

僕は曖昧に笑って答えを濁した。それがいけなかった。



曙「?」

曙「何よこの、机の上の」


そう言って曙さんが例の、夕張さんの”失敗作”を手にとった。
11: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:44:38.90 ID:nh3uhJbUo
提督「あっ、ダメだよ!」

曙「はぁ?アンタこんなもので遊んでたの?」


曙「ほんっとに、これだからクソ提督は…」

提督「いいから、それから手を放して!」


夕張「ちょ、提督!?」



慌てて曙さんの方へ駆け寄る。

だって、彼女の隣にいる潮さんと手が触れでもしたら大変だ。
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/16(火) 22:46:21.91 ID:nh3uhJbUo
曙「な、なんでアンタが寄ってくるのよ!?」

提督「いいからそのステッキを――」


曙「ち、近い、クソ提督近い!」

曙「あっちいけっ…って、えぇ!?」


提督「曙さん、危ないっ」


曙さんが体勢を崩しそうになったのを見て、思わず手を伸ばした。

伸ばして、彼女の腕を掴んでしまった。
13: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:50:29.20 ID:nh3uhJbUo
提督「あっ」

夕張「あっ」


女の子と手と手が触れ合ったのに、今この瞬間だけは何の感慨もない。

曙さんと僕が手を繋いでしまった…その意味が分かる二人だけが声をあげる。



曙「ちょ、放しなさいよこのクソ提督!」

潮「曙ちゃん、提督にそんな事言っちゃ駄目…です」

提督「うん、放せてたら放してるんだけど…」


もう僕の手は曙さんの左手をガッチリと掴んでしまっていた。
14: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:51:29.90 ID:nh3uhJbUo
潮「手を放したくないってことですかぁ!?」

漣「ラブコメキタコレ!」

曙「なっ…ななな、なな!?」


朧「面倒くさいことになった?」

提督「曙さん、落ち着いて話を聞いて欲しい」


曙「いいから手、放しなさいよぉ~~~~!」


まだ状況を分かっていない曙さんの悲鳴が、執務室にこだました。
25: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:11:17.44 ID:OJOXsenLo
曙「…で、その機械のせいで私たちの手が放れないって?」

提督「そうなんだよ」


曙「何てことしてくれるのよ、このクソ提督!」

提督「僕のせいじゃないんだけどっ」


提督「夕張さん、解除する方法はないの?」

夕張「無いですっ」


今日一番元気よく、夕張さんが返事する。
26: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:11:53.36 ID:OJOXsenLo
朧「そこまでキッパリ言わなくても…」

曙「張本人とは思えない開き直りっぷりね」


漣「まあでも、ご主人サマは女の子と無料で手をつなげる訳ですし」

提督「言い方酷くない!?どういう意味!?」


漣さんの斜め上な考え方はいつもの事だけれど。

それにしても僕って普段どういう目で見られているんだろうか?

今度真面目な潮さんあたりに聞いてみようかなあ…。
27: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:13:08.62 ID:OJOXsenLo
曙「やっぱりやらしい目的じゃないの、放しなさいよっ」

提督「だから違うって…」

曙「な、なによ。私なんかが目的じゃ無かったってこと!?」



どうしてそういう考えになるのかなあ。

手をつなぎながら罵倒されるという得がたい体験をしながら、僕はため息をついた。

でもこれ、いつまで続くんだろう。まさか一生このままって訳でもないだろうし。
28: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:14:06.49 ID:OJOXsenLo
夕張「まあ一日たったら効果も切れると思うので、それまでガマンして下さい」

提督「ふーん。なんだ、一日か」

曙「なんだ、一日でとけるのね。まあそれなら…」



うんうん、たった一日なら思ったより…



提督・曙「って、ええええええええ!?」


今度は曙さんだけじゃなくって僕まで一緒になって。

夕張さんに向かって驚きの声をあげるのだった。
29: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:21:05.25 ID:OJOXsenLo
一日、手の自由が効かない。

それ自体はまあ、何とかなる。今は緊急の案件がないし、代筆が出来ればいいから。

”提督として”の僕なら何とかなるのだけれど…。


問題は、そう。”男子として”の僕にあるんだ。

一日中女の子と、手を繋いだままずっと一緒に過ごす…。



曙「変態、変態っ。変態クソ提督~!」



しかも、混乱して顔を真っ赤にして…考えうる限りの罵倒を繰り返す彼女と一緒に。

あんまりな非常事態に僕は、曙さんって意外とボキャブラリーが少ないんだなって。

そんな間の抜けたことを思ってしまった。
30: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:22:25.70 ID:OJOXsenLo
曙「ちょっとクソ提督、手!」

提督「え、何?」


曙「に、握る力が強いんだけどっ…」

提督「あ、ご、ごめん!」


曙「う、うん…」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ七躯のみんな(主に漣さん)と夕張さんが執務室を去ったあと。

僕は曙さんと二人で椅子を並べて、これまた二人で執務机に向かっていた。
31: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:25:49.97 ID:OJOXsenLo
曙「ね、ねえ」

提督「ん、何かな、曙さん」


曙さんが手のひらに込める力を入れなおすたびに、微妙な力の変化が伝わってきて。

それがなんだか、とても恥ずかしいけれど…そんな事は顔に出さずに答えた。


曙「い、一日、アンタと手を繋がなくちゃいけないのは分かったわ」

提督「うん」

曙「だけど…」


言いづらそうに曙さんが口ごもる。

普段勝気なはずの彼女が、僕の目を見て話さないのはなんでだろう…?
32: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:27:59.51 ID:OJOXsenLo
曙「だけど、どうして私が秘書艦までやらなくちゃいけないの!?」

提督「だって、放れられないんだから…君にやってもらうのが一番効率的だよ」


今日は夕張さんが秘書艦の予定だったんだけれど、急遽交代。

そりゃあ一日一緒にいるんだから、こうした方がいいと思うんだけれど。



曙「何で私がアンタを助けないといけないのよ」

提督「あ、そこ違ってる。艦娘の被害状況の報告だから…」



思わず見つけた間違いを指摘する僕。

他の艦娘と執務を執る時みたいしてしまった…怒るかな?
33: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:29:04.02 ID:OJOXsenLo
曙「えっ、あ、そうね。こうした方が良さそう」

提督「うん、そうだね。そっちの方が伝わりやすい」


曙「ふん、私に任せとけば間違いないのよ」

曙「~♪」


あれれ?

さっきまでは文句を言ってたのにもう乗り気になってる。

というか、曙さんは秘書艦の仕事、今日が初めてのハズだけれど?
34: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:29:57.73 ID:OJOXsenLo
提督「曙さん、初めてなのに中々筋がいいじゃないか!」


曙「ハン…これくらいで筋が良いとか。何言ってんの?」

曙「むしろ他の秘書艦の手際が悪いんじゃない?」


憎まれ口も彼女が言うと不思議と悪意を感じない。

苦笑とともに僕は賞賛をもう一つ言い添える。



提督「まるで練習してきたみたいだよ!凄い!」



曙さんの手際の良さを褒めるこの一言。

これの、いったいなにが悪かっただろうか?

ぶ、っと変な息を吹き出したあと、曙さんが僕に喰ってかかる。
35: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:32:20.87 ID:OJOXsenLo
曙「ななな、何言ってるのよクソ提督!」

曙「私がアンタのために秘書艦の練習してたですって!?」


提督「僕のためにとかは言ってないけど…」


秘書艦に任命したことのない彼女がその練習をしてくるだなんて、本当に思っている訳がない。それに僕のためにだなんて、尚更だ。


曙「そ、そう。分かればいいのよ…」


怒っていたはずがそう言ったっきり急に黙っちゃうし、訳が分からない。

曙さんの発言の意図を探ろうとして彼女の方を覗き込むけれど…。

もう曙さんは再び書類と睨めっこしていて、僕の視線には気がつかなかった。
36: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:35:17.06 ID:OJOXsenLo
ふと、先ほどの疑問が蘇ってくる。

元々素直じゃなさそうな曙さんだけど、なんで僕はこうも敵視されるのだろうか、と。


出会い頭にキスしてしまっただとか、着替えを覗いてしまっただとか。

曙さんとの間にはそういう事件もなかったハズだから、本当に思い至らない。



椅子に姿勢良く座った曙さんの視線は真っ直ぐに机の上の書類に固定されていて。

そんな彼女の姿を、僕は真剣な目で凝視してしまっていた。
37: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:40:16.89 ID:OJOXsenLo
僕と比べて頭一つ背の低い彼女の顔が、すぐ近くにある。

切れ長の瞳は絶えず誰かを威嚇するように愛想のないかたちをしていて、逆にそれが可愛らしい。

色素が薄い髪の毛は執務室の大窓から入る陽光を受けて、綺麗な紫色に見えた。



その紫色がゴムひもでサイド・テールにまとめられていて、毛先が彼女の左肩―つまり僕が座っている側―へ垂れている。

思わず引っ張りたくなってしまう衝動をこらえるのに、僕は想像以上の労力を要した。
38: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:43:58.90 ID:OJOXsenLo
提督「(うわ、わわっ)」


だけども僕が一番動揺したのは、もっと違うところにあった。

瞳でも髪でもない。アイデアが浮かんだのか、短く笑って唇に当てていた鉛筆を動かしだした女の子らしい仕草にでもない。



提督「(曙さん、襟元!襟元!)」



彼女の背が低い分、僕が彼女を見るときは必然、上から覗き込むようなかたちになる。

曙さんの艤装は、丁度女学生のセーラーの様な装いだ。

だから…紺色のカラーからのぞく曙さんの白くて細い首筋が余計に目立ってしまって、僕の目が釘付けになる。
39: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:46:52.41 ID:OJOXsenLo
白い首筋にかかる彼女のおさげのせいで、隙間から中身は見えなかったけれど。

曙さんが頭を動かすたび、髪の毛の揺れて首筋の白がチラチラと見えてしまう。

ああ、これは良くない、良くないぞ、僕。さっさと目をそらさなきゃ…。



曙「何だか今日は暑いわね…」


提督「(ちょっと、何パタパタしてるの!?み、見え―)」



こちらが必死になって煩悩と戦っているのに何を考えているんだろうか。

曙さんはというと、僕の邪な視線にはまだ気がつかず、襟元を仰ぎだしたのだ!

一仰ぎ、二仰ぎとやるたびに…いけないと思いつつも僕の視線は彼女の胸元へ。
40: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:51:30.32 ID:OJOXsenLo
提督「(落ち着け僕。落ち着け。相手は人間なら歳下だぞ多分!)」



彼女に気がつかれる前に目を逸らさなきゃ…とは思っても中々理性が戻ってこなくて、僕は混乱した。

だって、襟元をパタパタとやるたびに、これまた白い鎖骨がチラチラと顔を出すのだ。正直カンベンして欲しい。



提督「(相手は歳下、相手は歳下…胸だってほら、そんなに…)」


提督「(あれ、よく見たら瑞鶴さんくらいはある…かも?)」


いやいや、お姉さんだし流石に瑞鶴さんの方が…。

そんな不埒極まる事を考えたからか、曙さんの手を握る僕の手がきゅっと強まった。
41: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:53:48.66 ID:OJOXsenLo
曙「きゃっ、ちょっと痛いじゃないクソてい…クソ提督?」


提督「あっ」




目と目が合う瞬間―感づかれる。



女の子は男の邪な気持ちを見破るアンテナがあるって聞いたことがある。

どうやらそれは今回も一発で発揮された、ということらしい。
42: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 22:58:57.60 ID:OJOXsenLo
曙「ななな、何見てんのよクソ提督っ」

曙「いいい、今私のこといやらしい目で見てたでしょ!?」

曙「それで、いったいどこ見てたのか言いなさいよ、クソ提督っ!」


提督「見てない!見てないよ、決して!」



ああ違う、しらばっくれる時は”何を?”って聞き返すんだった!



曙「嘘、だって目がやらしいじゃない!」


ほら、疑いが晴れなかった。

でも曙さんは追求が甘いなと僕は思う。

だって、どうやらどこを見ていたかは気づいてないらしいことが今の台詞で分かったから。
43: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 23:00:34.28 ID:OJOXsenLo
これならまだ誤魔化しようがあるぞ!

せめて首筋や胸元を見ていたことは隠さなきゃいけないと焦って…。

だから僕は、言わなくても良い事まで言ってしまった。


提督「あの、確かに見てたけどいやらしい意味でじゃないよ?」


嘘ですごめんなさい、いやらしい意味でした!




曙「じゃあなんで見てたのよ」

提督「その…髪、綺麗だなって思って」

曙「ば、バッカじゃないの、クソ提督、クソ提督、クソ提督っー!」


顔を真っ赤にさせた曙さんは、それっきりそっぽを向いて喋らなくなった。
44: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 23:01:39.28 ID:OJOXsenLo
提督「ご、ごめん」


曙「フン」



曙さんに敵視される理由が分からない、だって?

僕は数分前の自分に向かって心の中で話しかける。



多分それ、僕が原因だぞって。
45: ◆VmgLZocIfs 2015/06/17(水) 23:02:20.31 ID:OJOXsenLo
提督「あ、曙さん?」


曙「うるさい、クソ提督!」



僕と決して視線を合わそうとしない曙さんと、再び会話が出来るようになったのは…。


それからゆうに15分は経った後でした…。
53: ◆VmgLZocIfs 2015/06/18(木) 21:51:38.67 ID:DIoS9XbXo
利き手が塞がったクソ提督のために、机に向かった私はペンを走らせる。

秘書艦なんて別にやりたくないけど、私がやらなきゃクソ提督が困るんだから仕方ないわ。

せいぜい私に感謝することねって言ったら、純粋な笑顔で「ありがとう」って返された。



提督「あ、そこ違ってる。艦娘の被害状況の報告だから…」



あ、そっか。私の書き方だとイマイチ状況が分かりにくいわね。

やっぱりこいつ、教え方だけはホントに上手いんだから、腹が立つ。
54: ◆VmgLZocIfs 2015/06/18(木) 21:52:49.04 ID:DIoS9XbXo
曙「えっ、あ、そうね。こうした方が良さそう」

提督「うん、そうだね。そっちの方が伝わりやすい」


曙「これはいつも出してるの?」

提督「書くのは毎日かな。1週間分まとめて報告だね」

曙「ふうん、大変なのね」


提督「ちゃんと鎮守府を見てれば、そんな事ないさ」

曙「…」


でもそのおかげで私は何時ぶりか分からないくらい、コイツと自然に話すことが出来た。

別にそんなの全然嬉しくないけどっ。まあでも、嫌なわけじゃないけどね。


これは…そう、いままでやったことのない秘書艦の仕事が出来て気分がいいだけ。

…ほんと、それだけよ。
55: ◆VmgLZocIfs 2015/06/18(木) 21:53:36.06 ID:DIoS9XbXo
曙「ふん、私に任せとけば間違いないのよ」

曙「~♪」


私の意外な手際の良さクソ提督が驚くのを見ているのが心地いい。


提督「曙さん、初めてなのに中々筋がいいじゃないか!」


でも、ちょっと褒められすぎて憎まれ口を叩いてしまった。

クソ提督が顔をしかめなかったことにちょっとだけホっとしたけど…。



次の瞬間、私の平静は破られることになる。
56: ◆VmgLZocIfs 2015/06/18(木) 21:54:39.16 ID:DIoS9XbXo
提督「まるで練習してきたみたいだよ!凄い!」

曙「…!?ゲホっ、ケホッ!」

提督「うわ、どうしたの、曙さん!?」



秘書艦組の赤城や加賀たちの話に聞き耳を立てたり。

図書室で自由開放されている鎮守府の資料を読んでみたり。



そうして密かな”予習”をしていた私の行動が見透かされたようで、びっくりした。

ま、まさか、ホントに見てた訳じゃないわよね!?
57: ◆VmgLZocIfs 2015/06/18(木) 21:55:42.90 ID:DIoS9XbXo
…べ、別にクソ提督の秘書艦になりたくて勉強していた訳じゃないからっ。

この鎮守府の艦娘として知ってて当然の事を知ろうとした、それだけよ、ほんとに。


だから、そう。的外れなクソ提督の意見は否定しておかないといけない。

だって…か、勘違いされたら困るんだからっ!



曙「ななな、何言ってるのよクソ提督!」

曙「私がアンタのために秘書艦の練習してたですって!?」

提督「僕のためにとかは言ってないけど…」
58: ◆VmgLZocIfs 2015/06/18(木) 21:56:17.19 ID:DIoS9XbXo
慌てて否定しようと思ったら、いつもみたいなそっけない返事をしてしまった。

そのせいでクソ提督も口ごもってしまって、さっきみたいな普通の会話がなくなる。



ああ、またやっちゃった。



そう思ったけれど、既に叩いてしまった憎まれ口は取り消せなくて。

だけど、どうやって謝ったらいいかも、どうやったらコイツが笑顔になるかも分からなくって。
59: ◆VmgLZocIfs 2015/06/18(木) 21:59:17.38 ID:DIoS9XbXo
だから私は、私の肩ごしから書類を眺めるクソ提督の方を振り返りもせずに。

秘書艦の仕事に集中するフリをして、ただただ気まずい時間が過ぎ去るのを待つ。



一言、謝っちゃえばそれで終わることなのに。

他の艦娘なら簡単に出来ちゃうことが私には出来なくって。



私ったらほんと、ばっかみたい。

胸の内で、自分に向けてそっと呟いた。
スポンサーリンク
arrow_upward
arrow_upward